横浜やまて耳鼻咽喉科

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“こぶとりじいさん”のこぶは病気だった?耳下腺腫瘍(耳の下のしこり)に注意|耳鼻咽喉科医が解説

耳のお悩み
2025.11.10
日本の昔話「こぶとりじいさん」をご存じの方も多いでしょう。
顔に大きな“こぶ”を持つおじいさんが鬼たちに出会い、踊りの上手さを褒められてこぶを取ってもらうという有名なお話です。
この“こぶ”は昔話の中では象徴的な存在ですが、医学的に見ると、実際に人の顔にこぶのような腫れができる病気がいくつかあります
中でも最も可能性が高いといわれているのが、「耳下腺腫瘍」と呼ばれる耳の下にできる腫瘍です。
この記事では、こぶとりじいさんの“こぶ”を医学的な視点から読み解き、耳下腺腫瘍の症状や特徴について専門的に解説します。
こぶとりじいさん(耳の下にしこりのある男性)のイラスト


こぶとりじいさんの“こぶ”とは?


昔話の「こぶとりじいさん」に登場する“こぶ”は、顔の片側に大きく膨らんだしこりとして描かれています。
この特徴から考えられる疾患はいくつかありますが、最も典型的なのは耳の下や頬のあたりにできる「耳下腺腫瘍」です。
耳下腺とは、耳の下から顎にかけて位置する唾液腺の一つで、食事のたびに唾液を分泌しています。
この部分にできる腫瘍は、初期には痛みがなく、ゆっくりと膨らんでいくこともあれば、急激に大きくなるものもあるのが特徴です。
まさに“こぶとりじいさん”のように、顔の片側に丸く盛り上がるしこりが見られることがあります。
後述しますが、性別や年齢、急激な増大縮小などを考えると、「ワルチン腫瘍」であったのではないかと言われています。 
 

耳下腺腫瘍とは

耳下腺腫瘍は、耳の下や頬の部分にできる良性または悪性の腫瘍です。
腫瘍の約8割は良性で、最も多いのは「多形腺腫(たけいせんしゅ)」と呼ばれるタイプです。
一方で、悪性腫瘍(耳下腺癌)が発生することもあり、慎重な診断と経過観察が必要です。 
耳下腺腫瘍の典型的な症状は以下の通りです。
  • 耳の下、顎の角あたりにしこりができる
  • 押すと痛みや圧迫を感じるが、自発的な痛みはない
  • まれに顔の動きに違和感が出る(顔面神経麻痺)
これらの症状が見られる場合、自己判断せず耳鼻咽喉科を受診し、画像検査や細胞診を受けることが大切です。

耳下腺腫瘍の原因

耳下腺腫瘍の明確な原因はまだわかっていませんが、遺伝的要因や放射線曝露、慢性的な刺激が関与している可能性があります。
特に中高年以降の方に多く、男女差はあまりありません。
多形腺腫のような良性腫瘍でも、長期間放置すると悪性化する可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。

診断方法

耳下腺腫瘍が疑われる場合、以下のような検査を行います。
  • 触診:しこりの硬さや動きを確認します。
  • 超音波検査(エコー):腫瘍の大きさや内部の性状を確認します。
  • CT・MRI検査:周囲の構造との関係や深さを評価します。
  • 細胞診(穿刺吸引細胞診):腫瘍の一部を採取し、良性・悪性を鑑別します。
これらの検査結果をもとに、手術の必要性や経過観察の方針を決定します。
 

耳下腺腫瘍の種類

 

多型腺腫

 
耳下腺にできる腫瘍のなかで多くを占める良性腫瘍です。良性に分類されるものの、将来的に癌化することがあります。アメリカなどでは前癌病変として分類されることもあります。
治療法は基本的に手術になります。上記のような性質があるため、診断されたら基本的に手術をお勧めしております。 
 

ワルチン腫瘍

 
壮年期の男性、喫煙者の方に多い良性腫瘍です。腫瘍の内部に液体成分がたまって大きくなることがあります。また多数できることもあり、両側にできることも。
液体内に出血したり感染したりすると急激に巨大化したり(数日中)、逆に急激に小さくなることもあります。 
そのため、こぶとりじいさんの「こぶ」はこのワルチン腫瘍があった人が突然小さくなったり大きくなったことをエピソード化しているのではと考えられています。
 

耳下腺癌

 
悪性腫瘍の一種で、頻度はそこまで多くありません。ただし、耳下腺癌の中での種類は非常に多く(20種類程度)、悪性度の高いものもあれば良性と区別が難しいぐらいゆっくり進行するものもあります。
時に乳癌と同じ性質をもつものがあり、研究がすすんでいます。
  

耳下腺腫瘍の治療方法と手術の注意点

耳下腺腫瘍の基本的な治療は手術による摘出です。
良性腫瘍であっても再発の可能性があるため、腫瘍を包む被膜ごと慎重に取り除きます。
耳下腺の中には顔の表情を動かす「顔面神経」が走行しており、手術時にはこの神経を傷つけないよう細心の注意が必要です。 
手術は耳鼻咽喉科や頭頸部外科で行われ、必要に応じて全身麻酔下で実施されます。
術後は数日から1週間程度の入院が必要な場合があります。
顔面神経を温存するため、手術時間が長くなる傾向にありましたが、最近では神経刺激装置を使いながら、あえて神経を出さないで腫瘍を摘出することも増えてきました。 
悪性腫瘍の場合は、腫瘍の進行度や組織型に応じて、手術に加えて放射線治療や化学療法を行うことがあります。
基本的には手術で全摘出することが第一選択になります。顔のしびれや麻痺、リンパ節の腫れを伴う場合は、早急な精査が必要です。
悪性腫瘍であっても、早期に発見し適切に治療することで良好な予後を得られるケースが多くあります。 乳癌など他の悪性腫瘍に対して開発された分子標的薬を使用することもあります。

耳下腺腫瘍と混同されやすい病気

 
耳の下が腫れる病気には、耳下腺腫瘍以外にもいくつかの原因があります。
代表的なものに以下のようなものがあります。
  • 耳下腺炎(おたふく風邪や細菌感染)
  • 唾石症(唾液の通り道に石ができて腫れる)
  • リンパ節の腫れ(炎症や感染によるもの)

これらは急に腫れて痛みを伴うことが多いですが、それでも鑑別は難しいこともあるため、エコーなどを使った画像検査が有用なことが多いです。

耳下腺腫瘍の早期発見のポイント

耳の下や頬のあたりに、数週間〜数か月続くしこりがある場合は要注意です。
特に痛みがなくても、「なんとなく顔が左右で違う」「口角が下がった気がする」といった微妙な変化がある場合、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
早期の段階で発見できれば、手術の負担も少なく、良好な経過が得られます。

まとめ

昔話「こぶとりじいさん」の“こぶ”を現代医学的に見ると、耳下腺腫瘍・特にワルチン腫瘍の特徴とよく似ています。
実際、耳下腺腫瘍はゆっくりと進行し、初期には痛みがないため気づかれにくい病気です。
しかし、早期に診断し適切な治療を行うことで、良性・悪性を問わず良好な予後が期待できます。

横浜やまて耳鼻咽喉科では、耳下腺や顎下腺など唾液腺疾患に対して専門的な診療を行っております。必要に応じて高次医療機関への紹介を行います。
顔のしこりや腫れが気になる方は、自己判断せずにぜひ一度ご相談ください。

 

この記事の監修者

山本 学慧(横浜やまて耳鼻咽喉科 院長)
2012年 横浜市立大学医学部医学科 卒業
2014年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 耳鼻咽喉科
2015年 神奈川県立こども医療センター 耳鼻いんこう科
2016年 横浜市立みなと赤十字病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
2018年 横浜労災病院 耳鼻咽喉科
2020年 藤沢市民病院 耳鼻咽喉科
2021年 横浜市立みなと赤十字病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
2024年 横浜やまて耳鼻咽喉科 開院
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
・補聴器適合判定医
・Infection Control Doctor
・難病指定医
・身体障害者福祉法第15条指定医
・緩和ケア講習会修了
・臨床研修指導医
・嚥下機能評価研修修了

https://yamate-ent.com/doctor.html

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